はじめに
Windows 11「25H2」は、有効化パッケージ方式で配信されたアップデートで、従来の環境を引き継いだまま新機能を有効化する仕組みです。
この方式はアップデートが速い反面、既存設定・古いドライバ・周辺機器との相性問題が発生しやすいという弱点があります。
この記事では、2025年現在ユーザーから特に多く報告されている不具合を、症状 → 原因 → 詳細な対処方法の順でまとめています。
社内SE / PCサポート担当 / 自作PCユーザーでも使えるレベルの深さで書いているため、困った時の辞書として役立ちます。
① スタートメニュー・タスクバー・エクスプローラーの動作異常
25H2で最も多いトラブルが、Windows Shell(シェル)関連の動作不良です。
具体的には、スタートメニュー/タスクバー/ファイルエクスプローラーが不安定になり、操作不能になるケースがあります。
主な症状
- スタートメニューが開かない・操作しても反応しない
- タスクバーのアイコンが消える/押しても反応しない
- Explorer.exe が頻繁にクラッシュする
- 画面が白く一瞬フラッシュする(XAML レンダリングエラー)
- 設定アプリが開かない/開いても数秒で落ちる
原因
25H2では XAML ベースの UI コンポーネントが更新されましたが、これが一部環境で不安定になり、Windows Shell 全体を巻き込んで強制終了(クラッシュ)を引き起こしているのが原因とされています。
特に以下の条件が重なると発生しやすい傾向があります。
- 古い GPU ドライバーが残っている
- スタートメニュー系のカスタマイズツールを使用している
- ユーザープロファイルの破損(長期間使っている環境)
- NAS接続・Explorer拡張シェルを使っている
詳細な対処方法
上から順に行うことで改善することが多いです。
① エクスプローラーのキャッシュを削除
Explorer のキャッシュ破損が原因の場合、最も効果があります。
%localappdata%\Microsoft\Windows\Explorer
ここにある thumbcache*.db と iconcache*.db を全削除 → PC再起動。
② Shell再構築(PowerShell)
Get-AppxPackage MicrosoftWindows.Client.CBS | Reset-AppxPackage
スタートメニュー周りの構成を初期状態に近づける方法で、シェルの異常が改善することがあります。
③ タスクバー/Explorer の再起動
Ctrl + Shift + Esc → タスクマネージャー →「エクスプローラー」→ 再起動。
④ GPUドライバを最新に更新
UI描画に伴うクラッシュが起きるため、NVIDIA・AMD・Intel のドライバー更新は必須です。
⑤ 新規ユーザープロファイルを作成して動作確認
長年使ったプロファイルは破損しやすく、不具合が継続する場合はユーザー新規作成で改善する例が多いです。
② ゲーム・GPU関連のパフォーマンスが低下する
特定のゲームで FPS が30〜50%低下する報告があり、特に DirectX 12 を使用するタイトルで顕著です。
主な症状
- FPS が突然低下する
- ゲームのみ極端に重くなる
- GPU 使用率が落ちる
原因
25H2 の GPUスケジューラやゲーム関連最適化処理が、特定ドライバと相性を起こしていることが確認されています。
対処方法
- GPUドライバ更新(NVIDIA/AMD/Intel)
- 問題が発生した更新プログラム(KB5066835 など)をアンインストール
- グラフィックスの優先設定を「高パフォーマンス」に固定
③ BitLocker 回復キーを突然求められる問題
25H2 適用後、BitLocker が誤って回復モードに移行するケースが増えています。
主な症状
- 再起動すると回復キーの入力画面になる
- 構成変更していないのに「セキュリティが変更されました」と表示
原因
TPM とブート構成の検証が強化されたことにより、微細な差分でも回復モードに入るケースがあるためです。
対処方法
- Microsoft アカウント / Entra ID から回復キー取得
- BIOSアップデート(Intel系で有効)
- TPM の再同期(tpm.msc → TPM 初期化ではなく「クリア」せず同期のみ)
④ シャットダウン後に勝手に再起動する
25H2初期で多発した問題ですが、最新ビルドで改善されています。
しかし、いまだに症状が続く環境もあるため、以下を確認してください。
対処方法
- 高速スタートアップをOFFにする
- Wake on LANを無効化する
- 更新が終わっているか確認(未適用更新が原因の場合がある)
⑤ WinRE(回復環境)で USBキーボード/マウスが動作しない
回復環境に入った際、入力デバイスが動かず復旧できなくなるケースがあります。
原因
25H2 の WinRE で、一部 USB コントローラの読み込み順が変わり、ドライバが認識されないためです。
対処方法
- USB2.0 ポートに挿し替える(最も効果がある)
- 無線ではなく有線キーボードを使用
- WinRE を再構成 reagentc /disable
reagentc /enable
⑥ NAS(Synology / Buffalo)への接続不可・エラー 0x80070184
Explorer から NAS にアクセスできない問題も多発しています。
主な症状
- NAS がネットワーク一覧に表示されない
- 「0x80070184 エラー」で接続できない
- 名前解決(\\NAS名)が遅い / タイムアウトする
原因
25H2 で SMBv2/v3 のセキュリティが厳しくなり、NAS側が古い設定だと弾かれるケースが多いです。
詳細な対処法
- IP直打ちで接続(最も成功率が高い)
\\192.168.xx.xx - NAS の SMB1 を無効化し、SMB2/3 のみ有効にする
- 資格情報マネージャーの NAS項目を削除
- NASのファームウェア更新
⑦ Teams / Office でサインインループが発生する
「サインインしてもまた戻される」「認証ループになる」など、25H2環境の M365 で多く報告されている問題です。
原因
MSAL 認証キャッシュの破損、または職場アカウントと個人アカウントの衝突が原因です。
対処方法
- 資格情報マネージャーから AAD 関連を削除
- Teams 新アプリのキャッシュ削除 %AppData%\Microsoft\Teams
- ブラウザの Cookie / キャッシュを完全クリア
25H2へアップデートすべきか?(結論)
安定重視の人は「様子見」がおすすめ
特に業務用途(NAS/M365/リモート接続など)が重要なPCは、25H2 はまだ慎重に扱うべきです。
逆に、最新機能やAI機能を試したい人は、バックアップを取った上で更新して問題ありません。
まとめ
25H2 は新機能が豊富な反面、環境によっては大きな不具合が発生するアップデートです。
スタートメニューやエクスプローラーの異常、BitLocker、NAS接続、Teamsサインインなどが特に起きやすいため、トラブル時はこの記事を参考に原因を切り分けてみてください。

























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